母ちゃんへ


    「母ちゃん‼」 
   私に子供が出来てから、何時しか「ばあちゃん‼」と
   呼ぶようになっていました。
    今日は、「母ちゃん‼」と呼びます。
   「かあちゃん‼ 今まで ありがとう‼」
   あんなに厳しい環境の中、私達兄弟4人を、社会へ
   送り出してくれて‼
    私が子供を持ってみて、初めて、心を育てる事の
   むづかしさを知りました。
    母ちゃんは、私達に「天網恢恢 疎にして漏らさず」の
          「てんもうかいかい そにしてもらさず」の
   言葉を、何時も言って聞かせ、真っすぐに生きる事を
   教えてくれました。
    『母ちゃん‼ 覚えていますか?
   私が まだ 小学 1・2年生の頃だったと思います。
    近所の友達が、盲腸で入院した時の事。
   子供会の皆で、お見舞いに行く事になり・・・
   あの頃 本当に お金がなかったねぇ・・ 
    家にとっては、10円だって すごく大切な時、
   母ちゃんの裁縫箱の中に、10円玉が 何日間か
   入っていたよ。
    母ちゃんは 皆と一緒に行く私に、その10円玉を
   「持って行きなさい‼」と言って 渡してくれたよ。
    だけど・・ 10円なんだけど・・・ 
   母ちゃんに取っても 大切な様な気がして「いい・・」
   と言って、裁縫箱に返したら「なんで?」と、小さく
   言ったよ。 
    だまって 裁縫を続けたよ。
    お見舞いに 行った帰りに、皆 お店によって
   それぞれに 何か買っているのを見て「10円貰って
   来れば良かった」と思ったよ。
    でも、何日かした時 その10円で、アゲを買って
   芋の弦を煮てくれた時「貰わなくて良かった‼」と
   思ったよ。
    今では、大切な思い出になったよ。
    貰ったキャラメル1個を、四つに割って、
   兄弟に 分けてくれた事等も・・・・・
   今、心から「母ちゃん・ありがとう‼」
   お陰様で、 幸せです‼
    子供達が、皆 協力して、ばあちゃんの為にと 
   手に入れた家で・・・
   母ちゃんの部屋で、もう少し ゆっくりして
   貰いたかったよ。
    でも、今頃は、天国の 父ちゃんと出逢って
   お土産話に 花が咲いているのかも?
   天国に行ったら、父ちゃんによろしく伝えてください。
    私達子供は、父ちゃんと 母ちゃんの子供で有った事を、
   誇りに思っています。と、
    長い間 お疲れ様でした。
   又 逢う日まで さようなら

                  
               平成19年1月28日 

     1月27日 母永眠   享年 84歳
     葬儀の、喪主挨拶の時  母への手紙として朗読







私、現在55才 
長男は結婚して孫が二人いる。
今私は、長女と次男と三人で暮している。全員社会人。

今日、次男と園にいる母を訪ねた。
83才になる話し好きの母は、最近 過去 現在の記憶が入り
交じり、今日は亡き父の事を他人のように、さん付けで話して
いる。 今まで孫に話す時は、 

母も 「じいちゃん」と言っていたのに、父のことを
   「勝さん」と何度も言う。 

私は不安になり
   「勝さんち、誰」と、聞くと

母は 「ふん」と言って考えている。

息子 「勝さんは俺のじいちゃんやけ・・・
    お母さんから言うと、お父さんやし・・
    じいちゃんと、ばあちゃんの子供が、お母さんや」と、順番に
    指さしながら言う。

母  「そうか」と言いながら、又、同じ話を繰り返す。
    その内、同じ年代の友人の話になり
   「もう年取ってのう、話しよっても、なんち言いよっか 
    わけわからん・・変なことんじょーゆうて、
    わかりゃせん」 それを聞いていた

息子 「そうやなぁー・・・そうかも知れんなぁー
    こうなると・・お互い訳わからんけ
    一人は一寸ぼうし、一人は桃太郎の話をして
    二人共、ずーと あーや こーや 話し廻って、
    最後には どっちも鬼退治して、お互い 
    めでたし! めでたし!に成るんやろうなあ」と、
    ケロッとして言った。

私  「?・・どっちも鬼退治したんだっけ」 と言った後、

息子と二人で笑い転げる中、母はまだ続きを話していた。

     12:04 日曜日の出来事